伊賀泰代著「生産性」の書評、評価は△

最近出版された「生産性-マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの」(ダイヤモンド社)という仰々しいタイトルがついた本。白地に赤字でとても目立つ。「生産性」は私がやっているビジネスの根幹なので、これは見過ごせないということで本を購入した。

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まずは本をすべて読んだ率直な感想から・・「読むのがツライ」。特に中盤は面白みがなく、読み進めるのが苦痛で、罰ゲームのようだった。コンサル経験が少ないのか、内容は人事寄りな話が中心。でも批判するならしっかり読んでから、ということでひととおり読ませてもらった。ツッコミどころ満載の本である。

著者「伊賀泰代」という名前は聞いたことがなかったが、マッキンゼー出身とのこと。1993年から2010年まで17年在籍。コンサルタントから人事部に配属が変わったようで、普通に考えるとキャリアダウンだね。コンサルの現場に耐えられず、バックオフィスに逃げたのだろうと考えるのが普通だ。ちなみに私が所属していたコンサルティングファームでは、バックオフィスのイメージがすこぶる悪い。優秀な人間はほとんどいないイメージだ。

私自身も外資系コンサルティングファーム出身なので現場のことはよくわかっているつもりだが、マッキンゼーに限らずコンサルティングファームには「UP or OUT(アップオアアウト)」という考え方がある。直訳すると「昇進か退職か」、昇進できない人間は退職せよ、ということ。それくらいコンサルタントの現場は厳しいもので、伊賀泰代女史もそれに耐えられないから退職・・の代わりにバックオフィスに逃げたのではないか、と考えられる。

本を読み始めて早々にウンザリした。この手の自己啓発本にありがちなパターン①上から目線、②アメリカ至上主義(外資系かぶれ)、③日本批判、④横文字大好き、が全開でとにかく鼻につくのである。「はじめに」を読めばすぐに出てくる。「世界からイノベーティブだとみなされているシリコンバレー型の企業の多くは、日本企業よりはるかに生産性を重視」などと聞くと、日本企業の人はカチンとくるのではないだろうか。その根拠がしっかりしていればいいのだが、この手の著者はろくに現場を知らずに主観だけで物を言う。

第1章では、「改革」をわざわざ「イノベーション」と書き、「改善」をわざわざ「インプルーブメント」と書く。改革と改善なら5文字で済むのに、17文字も使っている。ページを水増ししているだけなのでは?それから、イノベーションとインプルーブメントの区分が不明確。どこまでがインプルーブメントで、どこからがイノベーションなのかわからない。2つの境界が不明瞭だから、主張がぼやけてしまう。また、イノベーションはすごいんだぜ、インプルーブメントは大したことないんだぜ、と主張したいのだろうが、それはイノベーションを起こしたことのない人に表現できるわけがないのだ。著者の実績がよくわからないので、説得力がない。たぶんこの本の評価を下げる大きな原因はそこにある。

そして、「Time for innovation」と「Motivation for innovation」というしょうもない英語を出して、さも外資系のような雰囲気を醸し出している。英語ができないからわからないから批判をしているのではなく(私はTOEIC900ホルダー)、もっとわかりやすく書けるはずなのにわざわざわかりにくい(英語としても上手ではないし面白くもない)用語を羅列して、私ってスゴイでしょ?という自己顕示欲が旺盛な輩が下衆だなぁと思う。人にわかりやすく伝えようという気持ちよりも、お前らにこの英語わからないだろうという上から目線が本当に滑稽だ。

次に、図表が下手くそ。パラパラとページをめくって図だけ見てもらえばわかるが、本当にコンサルやってたのかな?というくらい図がヘタ。ほぼすべての図表がわかりにくいのだが、話が単純でわざわざ図にしなくてもいいようなところは置いておき、例えば図表32(情報バイアスの危険性)あたりは頑張って書いたのかな、と思うけれど、箱の中にこれだけ文字を詰め込んでいるようではもはや図としての役割を果たしていない。きちんと自分の頭の中で整理してできていないとこういう図になる、という悪例。コンサルタント1年目くらいの素人が書きそうな図だ。

さらに、全般的に言えるのが、人事の話が多すぎ。マッキンゼーの17年間で、半分をコンサルタントとして過ごしてきたのならもっと現場の面白い事例が出せそうなものだが、どうも話が人事に偏りすぎ。ネタがないのかなぁと思ってしまう。あるいは経験がカッスカスのすっからかんなのだろうか。第7章の研修の話なんかもうひどい。ロールプレイングがとても効果があるのだ、というごくフツーの話をダラダラと。本のタイトルは「生産性」なんだけど、あまり関係ないね。他の研修と比べて生産性が高いという客観的なデータも提示してこないし、たいして面白い図も出てこない。話はクソつまらない。コンサルやってて結局そこ?本をだいぶ読み進めてきて、今からその話!?という感じだ。

1つ良かったと思うのは、第8章のブランク資料の話(「ブランクマテリアル」とか横文字使われてなくてよかった・・)。成果物のイメージを作って事前に上司と擦り合わせするというのは、日本企業でもなかなか浸透していないことだと思うので、これを徹底しているのはいい気付きを与えていると思う。とはいえ、図表27とか図表28とか図表29とか、例示がちょっと雑すぎるというか、酷すぎない?手書きでこういうイメージを書く、というのを実際にやったことがあまりないんじゃないかな。こういうところから、この著者はきっと現場経験が少ないんだろうなぁ、と思ってしまうのだよ。

ちなみにこの伊賀泰代女史は、炎上アカウントで有名な「ちきりん」と同一人物、という情報がネットユーザーの間ではかなり確からしく語られている。

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「ちきりん」を商標登録しているのはこの「伊賀泰代」女史。特許庁の特許情報プラットフォームで検索すればすぐ出てくる。

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登録されている住所は「東京都渋谷区渋谷3-5-16 渋谷三丁目スクエアビル2F」。ここは、ベンチャー企業向けの「katanaオフィス」というバーチャルオフィス(レンタルオフィス)の所在地。月々5,500円からオフィスを使用することができる。

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