ゼネラリストの時代

30歳や40歳になる前に、自分の進むべき道=専門性を決めなければダメだ、と一般的には言われている。専門家やスペシャリストが正義で、いわゆる管理職やゼネラリストが悪であるかのような情報が氾濫している。それは果たして正しいのだろうか。一つの専門性を極める人材ばかりが求められているのだろうか。日々仕事をしながら自分の進むべき道を探っている社会人の方に、これからの時代に必要な人材のあり方を提示する。

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スペシャリストで溢れる社会

大きな時代の変化がある。ここ十年で急増した士業のおかげで、専門家を調達することが容易になったのだ。まずは専門家として代表的な士業の人数を見ていただきたい。

  • 弁護士 35,045人(2014年)
  • 公認会計士 34,079人(2015年1月)
  • 弁理士 10,173人(2014年)
  • 税理士 74,873人(2015年)
  • 司法書士 21,658人(2014年)
  • 中小企業診断士 21,837人(2013年)
  • 行政書士 44,740人(2014年)

例えば弁護士で言えば、ここ十年で倍増している。業界内での競争が激化し、価格破壊が起き、食えない弁護士まで出てきている始末。日本に安住する「ゆでがえる」状態の専門家は絶滅寸前。スペシャリストであっても経営能力がなければ事務所の維持は不可能で、顧客ニーズを捉えた付加価値の高いサービスを提供できなければ売上は減る一方である。努力もせずに「先生」と呼ばれて重宝されていた時代は終わったのだ。

顧客は何を求めているのか?

では、今の時代の顧客は何を求めているのだろうか。

それは、専門能力ミックスによる複雑な課題解決だ。単一の専門家では不可能な、複雑な課題解決が求められている。代表的なのは海外展開要請だ。ある国に進出したいという企業がいるとすれば、いわゆるPEST(政治、経済、社会、技術)に精通したスペシャリストと、法律面・財務面でのスペシャリスト、さらには進出先での経営に長けたコンサルタントが必要になる。

海外進出プロジェクトチームを結成し、複数のスペシャリストが力を合わせて進出を成功させなければならない。例えるなら、弁護士が1人いたところで無力であり、ビジネス能力のない弁護士や英語のできない弁護士では、複雑化、多様化した顧客ニーズに対応するのは困難である。

わかりやすい事例としてグローバルな事案を挙げたが、海外に進出するだけが複雑な課題ではない。日本国内でも外国人顧客や外国人就労者が増加し、ダイバーシティが求められている。業界他社より優位に国内事業を展開をするため、提案型営業や新規サービス開発など、より付加価値の高い提案を行わなければならない。

これらのニーズに応えようとしても、たった一人のスペシャリストだけで何ができようか。スペシャリストがアウトプットできる付加価値には限界があるのだ。

求められる3つの能力

それでは、時代の要請、顧客ニーズに応えていくためにはどういった能力が必要なのだろうか。大きく分けて3つある。

アグリゲート能力

多くのプロジェクトでは、その都度発生する課題に対して、必要な人材を市場から調達し、アサインし、チームビルディングを行う。オンデマンドで必要な専門家の知恵を結集する能力のことを「アグリゲート能力」と呼ぶ。同業のスペシャリスト同士、いわゆる仲間内(身内ともいう)の結束を大事にするスペシャリストは、これからの時代には不要であり、多様な能力を持つ専門家を有機的に結合し、新しい価値を生み出す人材こそが求められている。

マネジメント能力

ダイバーシティが叫ばれる時代、様々な能力を持つ人たち、場合によっては多国籍のチームを一つにまとめて、限られたリソースの中でプロジェクトを成功に導いていくプロジェクトマネジメントの能力が必要だ。しかし、スペシャリストでプロジェクトマネジメント能力をもつ者は少ない。マネジメントなど必要ない、専門能力さえあれば食っていけると高を括っているスペシャリストが多いのは事実だ。複雑な課題解決には多様な人材が必要であり、さらに人材がいるだけではダメで、人材の能力をうまく引き出して最大の成果をあげることが求められているのである。

インサイト能力

潜在的な消費者のニーズを捉えて新しい価値を生み出す能力のことを「インサイト能力(洞察力)」と呼ぶ。すでに世の中に顕在化している需要に対して財やサービスを提供していくのはある意味簡単なことだが、潜在的なニーズを探り当てる、あるいは作り出す能力をもつ者は少ない。特に、旧態依然とした業務しか行ってきていないスペシャリストには無縁の能力であろう。

しかし、インサイトできないと、これからの時代を生き残っていくことはできない。なぜなら、同業のライバルが増え続け、国内の顧客は減り続けている中、待ち受けているのはシビアな価格競争しかないからである。同じような仕事をしている以上、もう価格を下げるしか差別化する手立てはない。ならば、新しいニーズを作り出す側に転向するしか生き残る道はない。

まとめ

専門知識だけに特化した「スペシャリスト」など必要ない。広い視野で、アグリゲート能力、マネジメント能力、インサイト能力、これらの総合的なビジネス能力を有する「ゼネラリスト」が求められている。有能なゼネラリストがこれからの時代を動かしていくのである。

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